
WILD HEARTS™
開発: KOEI TECMO GAMES CO., LTD.発売: Electronic Arts¥970
アクションアドベンチャー
PlayNext レビュー
「次の獲物はどこだ」と地図を広げた瞬間、ふと気づく。自分が組み立てた木製の足場の上に立ち、眼下には霧に沈む古代の里が広がり、遠くでは一頭の巨獣が山肌を揺らしながら移動している。WILD HEARTSの核心はここにある――「狩り」と「建築」が分かちがたく融合した、唯一無二のハンティング体験だ。
コーエーテクモとEAのタッグで生まれたこの作品は、モンスターハンターが切り開いたハンティングゲームというジャンルに、「からくり」という独創的なメカニクスを持ち込んだ。戦闘中にリアルタイムで木箱を召喚して足場にしたり、バネ仕掛けの罠を瞬時に配置したり、空中に足場を積み上げて巨獣の頭上から奇襲を仕掛けたりと、その可能性は想像以上に広い。最初は「木の箱を置くだけ?」と思うかもしれないが、からくりには基本的なものから複合型のものまで段階的に解放され、熟練すると戦闘が完全に変わる。巨獣の攻撃をただ回避するのではなく、からくりを組み合わせて局面そのものを作り変えていく感覚は、このゲームにしかない手触りだ。
武器種は8種類で、それぞれプレイスタイルが大きく異なる。重厚な大剣でド派手に叩きつけるもよし、弓で距離を保ちながらからくりで補助するもよし、槍でスピーディに立ち回るもよし。モンスターハンターをプレイしていれば武器の選択感覚はすぐに馴染めるが、からくりとの組み合わせを意識し始めると戦略の深みがまったく変わってくる。ソロでじっくり試行錯誤するのはもちろん、最大3人のオンライン協力プレイにも対応しており、クロスプラットフォームで友人と一緒に挑める点もポイントだ。
舞台となるのは「雅葦原(みやびあしはら)」と呼ばれる和風ファンタジーの世界。日本の平安時代めいた美術様式に、自然の力を体内に宿した「kemono(獣)」と呼ばれる巨大生物が暴れまわる。花びらを纏いながら突進してくる「花化け(はなばけ)」や、氷を操る巨大猪など、デザインのコンセプトが一貫して「自然と獣の融合」にある。敵が単なるモンスターではなく、自然現象の化身として描かれているため、倒したあとにも独特の余韻がある。ストーリーは失われた古代技術「からくり」を巡る主人公の旅を軸に進むが、世界観の作り込みに比べるとナラティブは比較的オーソドックスで、どちらかといえば世界を「体験する」ことに重点が置かれている。
ビジュアルは発売時点でパフォーマンス最適化に課題があったが、現在のバージョンではかなり改善されている。霧の中に沈む木造建築群、四季の移り変わりを感じる山岳地帯、桜が舞い散る狩り場――環境美術の密度は高く、ただ歩いているだけでも発見がある。サウンドも和楽器を前面に押し出したBGMが場面に合わせてダイナミックに変化し、獣の咆哮が地面から伝わってくるような臨場感を演出している。
プレイ時間の目安としては、メインコンテンツを一周するのに40〜60時間程度。エンドコンテンツとしては強化版の獣との戦い、特定条件での高難度クエスト、武器・防具の素材収集によるビルド最適化などがあり、やり込み層なら100時間以上は十分引っ張れる。
モンスターハンターと比較したときの最大の違いは「からくり」によるゲームプレイの能動性だ。モンハンのピットフォールや閃光玉といった消耗アイテムに相当するものが、WILD HEARTSでは「毎回手動で組み立てるインタラクティブな構造物」になっている。この能動性が楽しいと感じるかどうかが、このゲームとの相性を決める最大のポイントといえる。また、ワイルドハーツの獣はモンハンのモンスターより動きのパターンが読みにくく、初見ではかなり苦戦することがある。難易度の緩やかさを求めている人には注意が必要だ。
注意点として、現在の価格(¥970)は大幅な値下げ後のものであり、コンテンツ量に対してのコストパフォーマンスは非常に高い。ただし、オンラインのアクティブプレイヤー数はピーク時より減少しているため、マッチングには時間がかかることもある。ソロでもバランスは取れているが、難しい獣に詰まったときの頼みは自分自身のからくり力になる。
こういう人に強くおすすめしたい――ハンティングゲームをある程度遊んでいて「新しい刺激が欲しい」と感じている人、建築や工夫を組み合わせたアクションに興味がある人、和風ファンタジーの世界観が好きな人。逆に、純粋にモンハンのシステムを踏襲した体験を求めている人や、オンラインで賑やかなコミュニティを楽しみたい人には少し物足りなさを感じる可能性がある。現在の価格帯を考えれば、ハンティングゲームに少しでも興味があるなら試さない理由はほとんどない一本だ。
スクリーンショット











