Hades II

Hades II

開発: Supergiant Games発売: Supergiant Games¥2,550
アクションインディーRPG

Steam レビュー

圧倒的に好評

PlayNext レビュー

「もう一回だけ」——この言葉を何度心の中で呟いたかわからない。Hades IIをプレイしていると、失敗してスタート地点に戻るたびに、不思議と「悔しい」ではなく「次こそは」という前向きな気持ちが湧いてくる。ローグライクというジャンルは死と繰り返しを本質とするが、このゲームはその「繰り返し」を苦行ではなく快楽へと昇華させることに、前作以上の洗練さで成功している。 主人公はメリノエ——冥界の神ハデスとペルセポネの娘であり、死の女神ヘカテーのもとで修行を積む黒魔術師だ。目的は、時の巨神クロノスの打倒。前作でザグレウスが地下を駆け抜けたように、メリノエは新たな冥界「タルタロス」から地上を目指し、次々と立ちはだかる敵を蹴散らしながら前進していく。女神ヘカテーとの師弟関係、オリュンポスの神々との対話、そして少しずつ明かされる世界の秘密——ストーリーは「駆け抜けながら積み上がっていく」構造になっており、何度も周回するほどに物語の深みが増していく設計だ。 操作の手触りから話そう。メリノエはザグレウスよりも「魔術師」らしい動きをする。近接攻撃の「マリス」、遠距離の「トーチ」、横薙ぎの「アクセル」、そしてデフォルトの「シュプリーム」など、武器のバリエーションが豊富で、それぞれが全く異なる戦闘スタイルを生む。さらに、新要素「ヘクス」と呼ばれる必殺技システムが加わり、魔力を溜めてから一気に解放する快感がある。前作のダッシュ無敵を使いながら攻め続けるスタイルとは異なり、本作はより「構築」の要素が強く、どのアーキタイプ(神の加護)を揃えてビルドを完成させるかを考える楽しさが増している。神の加護「ボーン」の組み合わせや「ダオ」ポイントを使ったスキルツリーのカスタマイズなど、ランごとの試行錯誤に深みがある。 テンポは前作よりやや落ち着いている。前作はとにかく「次へ次へ」という高速感があったが、本作は立ち止まって状況を確認したくなる場面が多い。エンカウントのアリーナも変化に富んでおり、単純な殲滅だけでなく、特定の条件をクリアするバリエーションもある。「ひたすら突き進むアクション感」よりも「考えながら動く戦略性」を求めるプレイヤーには、むしろこちらのほうが肌に合うかもしれない。 ビジュアルの美しさは特筆に値する。前作から引き続きSupergiant Gamesが手がけるグラフィックは、ギリシャ神話世界の神秘性と独自のデザインセンスが融合した唯一無二の世界観を持つ。タルタロスの青と黒に染まった幻想的な空間、アスフォデルを越えた先の世界、月明かりの下に広がる地上のエリアまで、場面ごとにガラリと変わる色使いとアートスタイルは、何十時間プレイしても飽きない視覚的な引力がある。サウンドトラックはDarren Korb(ダレン・コーブ)が再び担当。戦闘中は高揚感を高めるエレクトロニック×オーケストラのサウンドが響き渡り、拠点では静かで耽美な旋律が流れる。ボイスアクティングも前作同様に豪華で、キャラクターたちの掛け合いを聞くだけで世界に没入できる。 似たゲームとの比較で言えば、前作『Hades』はもちろん、『Dead Cells』や『Enter the Gungeon』とも異なる位置に立つ。Dead Cellsが「アクションの純度」、Enter the Gungeonが「弾幕回避の反射神経」を重視するのに対し、Hades IIは「ビルド構築の楽しさ」と「物語への愛着」が軸になっている。『Slay the Spire』が好きなデッキ構築派にも、この「ランごとに異なる強さを組み上げる」感覚は刺さるはずだ。インディーローグライクを広く遊んできたプレイヤーが「これは別格」と感じるのは、単なるアクションの完成度だけでなく、Supergiantが積み上げてきたストーリーテリングの力によるところが大きい。 プレイ時間の目安としては、最初のエンディングを見るまでに30〜50時間程度が目安になる(前作比でルートが複雑なため)。そこからが本当のスタートで、「真エンディング」に至るまでの周回、各武器の熟練度上げ、NPC関係の深堀りなど、エンドコンテンツは膨大だ。100時間を超えてもまだやることがある、という状況になる可能性が高い。本作はアーリーアクセス段階(2026年3月時点)であり、今後もコンテンツが追加されていく点は念頭に置いておきたい。逆に言えば、アップデートのたびに新しい発見がある現在進行形のゲームでもある。 注意点としては、本作がアーリーアクセスであることに尽きる。現時点でもボリューム・完成度ともに十分高いが、一部コンテンツが未実装であり、バランス調整も継続中だ。また、前作未プレイでも遊べるが、Supergiant作品のロア(世界観の積み重ね)を楽しむためには前作を先に遊ぶことを強くすすめる。そしてローグライク特有の「何度も同じ序盤を繰り返す」構造が根本的に合わない人には、このゲームも例外ではない。難易度は前作より高めに感じる人が多く、序盤の突破感が出るまでに時間がかかることもある。 強くおすすめしたいのは、前作Hadesが好きで続編を待ち望んでいたプレイヤー、ローグライクが好きだが「死んだら終わり」という絶望感が苦手でナラティブも楽しみたい人、アクションゲームにビルド構築の奥深さも求める人。反対に、一本道の明快なストーリーを求める人、ローグライクの「繰り返し」構造が生理的に合わない人、アーリーアクセスの完成品ではない状態を許容できない人には今ではなく正式リリース後をすすめたい。 ¥2,550という価格帯で、これだけの密度と完成度を誇るゲームは稀だ。Supergiant Gamesはまた一つ、ジャンルの基準点を塗り替えつつある。
Steam ストアで見る →

スクリーンショット

Hades II screenshot 1Hades II screenshot 2Hades II screenshot 3Hades II screenshot 4Hades II screenshot 5Hades II screenshot 6

似ているゲーム