
Hades
開発: Supergiant Games発売: Supergiant Games¥700
アクションインディーRPG
Steam レビュー
圧倒的に好評
PlayNext レビュー
死ぬたびに、続きが気になる。これほどシンプルかつ強烈な体験を与えてくれるゲームは、そうそうない。『Hades』はローグライクというジャンルを知らない人でも、気づいたら数時間が溶けているタイプのゲームだ。「一回だけもう一回」を永遠に繰り返させる魔力がある。
プレイヤーが操るのは、冥界の神ハデスの息子・ザグレウス。目的はただひとつ、冥界から脱出して地上へ向かうこと。しかし父ハデスはそれを阻もうとし、冥界の怪物たちが行く手を阻む。倒されると入口に戻される——典型的なローグライクの構造だ。しかしここで他のローグライクと決定的に違う点がある。**死んでも物語が進む**のだ。
失敗してスタート地点に戻るたびに、ザグレウスは父や使用人たちと会話する。オリンポスの神々から届くギフトには新しいセリフが添えられ、なじみのキャラクターたちとの関係が少しずつ変化していく。「もう一度やり直す」というローグライクの本質的な繰り返しが、物語を積み上げるための仕掛けになっている。この設計の巧みさは本物で、死ぬことへの虚無感がほとんどない。むしろ「早く戻って次の会話を見たい」という気持ちにさえなる。
戦闘の手触りは、とにかく気持ちいい。ダッシュ、攻撃、必殺技、各神々から授かるボーン(恩寵)を組み合わせてキャラクタービルドを作り上げていく。武器は剣、槍、弓、盾など複数あり、それぞれ動かし方がまったく異なる。盾は投擲して跳ね返らせることができ、弓は溜め撃ちでスナイパー的に使える。選んだ武器と、道中で取得したオリンポスの恩寵の組み合わせによって、同じ武器でもまったく違うプレイスタイルが生まれる。「雷の雨を降らせながらダッシュするたびにダメージを与えるビルド」や「攻撃のたびに毒を蓄積させて爆発させるビルド」など、試行錯誤が楽しい。
テンポは非常に速く、1回の脱出チャレンジは早ければ30〜40分、初心者なら途中で何度か死にながらも1〜2時間ほどかかる。各部屋でのバトルはリズムゲームのような流れがあり、敵の攻撃パターンを覚えて回避するアクションゲームとしての爽快感が高い。いわゆる「死にゲー」ほどシビアではなく、失敗しても大きなペナルティがないため、ストレスよりも「次こそ」という意欲が上回る。
ビジュアルは、Supergiant Gamesが得意とする美麗な2Dイラスト調。ギリシャ神話の神々がそれぞれ個性的なデザインで登場し、アルテミスは凛々しい狩人、アフロディーテは妖艶な女神として描かれる。冥界の荒々しい石造りの空間と、神々の鮮やかな色彩のコントラストが視覚的に美しい。サウンドトラックはDarren Korb(前作からの常連コンポーザー)によるもので、ギリシャ的な弦楽器とエレクトロニックサウンドを融合させた独特のスタイルだ。戦闘中のBGMは激しく、ボス戦では特に盛り上がる。
同じローグライク系で比べると、『Dead Cells』はより純粋なアクションゲームで難易度が高め。『Enter the Gungeon』はシューティングスタイルでコメディ色が強い。『Hades』はこれらに比べて物語体験が圧倒的に充実しており、キャラクターへの感情移入がしやすい。ローグライクが苦手でも「キャラクターが好きだから続ける」という動機が生まれやすいのが強みだ。
クリアまでのプレイ時間は、初回脱出成功まで20〜30時間ほど見ておくとよい。ただし、初回クリアは本当の意味での「終わり」ではなく、そこからさらに物語が展開する。真のエンディングを見るには複数回のクリアが必要で、合計50〜100時間は十分に楽しめるボリュームがある。難易度を上げる「デスデファイアンス」モードもあり、やり込む人向けの要素も豊富だ。
注意点として、このゲームは「繰り返し」が前提の設計なので、同じような場所をぐるぐるする感覚が苦手な人には向かない。また、最初の数時間は敵のパターンを覚えるまで少し苦しい時期があり、すぐに派手に活躍できるわけではない。英語ボイスのみ(テキストは日本語対応)という点もやや気になる人はいるかもしれない。
「ゲームをやり込むのは好きだが、難しすぎるのは嫌」「ストーリーがしっかりしたアクションゲームをやりたい」「ゲームに深みを求めている」という人には強く勧めたい。反対に、ローグライクの繰り返し構造がそもそも好みでない、あるいはリアルな3Dグラフィックしか受け付けないという人には合わないだろう。
¥700という価格は、このゲームのコンテンツ量と完成度を考えると、ほぼ間違いなく人生のゲーム体験コスパ上位に食い込んでくる。セール価格ならば迷う理由がない。
スクリーンショット











