
NieR:Automata™
開発: Square Enix発売: Square Enix¥2,112
アクションRPG
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
ゲームを起動してから数分後、あなたはすでに「これはただのアクションゲームではない」と気づくはずだ。砂漠の廃墟を駆け抜けながら機械生命体を斬り伏せていると、突然、メニュー画面そのものがゲームの語りに組み込まれてくる。UIが意味を持ち、「セーブする」という行為自体が物語の一部になる。NieR:Automataは、プレイヤーが「ゲームをプレイしている」という行為を揺さぶることで、存在と意識についての問いを投げかける稀有な作品だ。
アクションの基本は二刀流の近接攻撃と遠距離射撃のシームレスな組み合わせ。主人公の2Bは軽快に空を舞い、コンボを叩き込みながら、小型の浮遊兵器「ポッド」で銃弾やレーザーを降り注ぐ。プラチナゲームズが手掛けたバトルシステムは洗練されており、ボタンを連打するだけでも派手に動くが、回避のタイミングを研ぎ澄ませばより深い爽快感が生まれる。難易度は「やさしい」から「困難」まで幅広く設定されており、「やさしい」では自動回避オンにしてストーリーだけを楽しむことも可能。逆に「困難」や「ノーマル」でしっかり立ち回りを磨くと、アクションゲームとしての奥深さが顔を出す。ウェポンチップシステムによる武器・スキルカスタマイズも充実しており、攻撃重視・回復重視・スピード重視など、自分好みのビルドを組む楽しさもある。
フィールドはオープンワールドと呼ばれているが、いわゆる広大な探索空間というよりも、各エリアが独自の空気感を持つ連結構造に近い。廃墟となった遊園地、海に沈みかけた都市の残骸、砂漠に散乱した機械の骸——どのロケーションも退廃的な美しさに満ちており、歩いているだけで感傷的な気分になる。移動のテンポは快適で、アクションの合間に広い草原を走り抜けるとき、BGMとの相乗効果で不思議な没入感が生まれる。
音楽は、このゲームを語る上で外せない要素だ。作曲家・岡部啓一率いるMonacaが手掛けたサウンドトラックは、ゲームの「感情の芯」を担っている。状況に応じてボーカルあり・なしがシームレスに切り替わり、戦闘が激化すると歌声が重なり、フィールドを探索していると静かなピアノが染みる。音楽だけで泣けるシーンが複数存在し、「音楽とゲームプレイの一体化」という点では現代のゲームの中でも最高峰の一つと言えるだろう。グラフィックは2017年の作品であるため最新鋭とは言えないが、CGではなくアートとして機能しており、特に夕暮れ時の荒廃した都市や、光の差し込む廃工場の情景は今見ても息を呑む。
物語は表面上、機械生命体に侵略された地球を奪還するためにアンドロイドが戦うSFアクションだ。しかし実態は、「存在することの意味」「感情とは何か」「生きることと死ぬことの違いは何か」を問う哲学的なロールプレイングに近い。ニーチェやデカルトを思わせる問いかけが、説教臭さを排除しながらゲームプレイの中に溶け込んでいる。特筆すべきは、エンディングが複数存在し、2周目・3周目で全く異なる視点からストーリーが語り直される構造だ。1周目をクリアしただけでは物語の半分も見えておらず、周回を重ねるごとに世界の見え方が根底から変わっていく。この設計は意図的な驚きであり、ネタバレなしに体験することを強くおすすめする。
比較対象を挙げるなら、アクションの爽快感はプラチナゲームズの「Bayonetta」や「Metal Gear Rising」に通じるが、それらにはないメランコリーな余韻がNieR:Automataにはある。世界観の哲学性や複数エンディング構造は「Disco Elysium」や「Undertale」に近い精神を持つが、あくまでアクションとして操作している時間が長く、「読むゲーム」ではなく「動かすゲーム」だ。オープンワールドRPGとして「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」と比べる声もあるが、探索の自由度よりも演出の密度に重きを置いているため、体験の性質は異なる。「アクションもしたいし、深い話も読みたい」というプレイヤーに最も刺さる作品だ。
プレイ時間は、エンディングAとBを見るまでが20〜25時間程度。しかし真のエンディングに到達するには周回プレイを含め40〜50時間ほどかかる。やり込み要素としてはサブクエスト、収集要素、トロフィー/実績コンプリートなどがあるが、最大の「やり込み」はゲーム自体の構造にある。何周もすることで、最初は見落としていたセリフや演出に新たな意味が生まれ、「あの場面はそういうことだったのか」と気づく瞬間が何度も訪れる。
注意点としては、PC版は発売当初に最適化面での課題があったが、現在はFAR(Fix Automata Resolution)などのコミュニティパッチが広く普及しており、快適にプレイできる環境が整っている。また、ストーリーを理解するためには前作「NieR Gestalt/Replicant」の知識があると深みが増すが、本作単体でも十分に完結した体験ができるため、未プレイでも問題ない。
こういう人に強くおすすめしたい。「アクションゲームは好きだが、最近プレイ後に何も残らない作品ばかりだと感じている」という人。「ゲームで泣いたことがないが、一度体験してみたい」という人。「BGMに心を動かされる感覚が好き」な人。哲学や文学が好きで、それをインタラクティブな形で体験してみたい人にも刺さるはずだ。
一方、純粋なアクションゲームとしての難度や複雑さを求めている人には物足りないかもしれない。「フロム系」のような死にゲーの緊張感を期待するとギャップがある。また周回プレイが前提の構造に対して「1周で完結してほしい」と感じる人や、哲学的・抽象的なテーマに興味が持てない人には響きにくい可能性もある。
¥2,112という価格で、クリアまでに40時間以上の体験と、プレイ後もしばらく頭を離れない問いを持ち帰れる。コストパフォーマンスという言葉が陳腐に聞こえるくらい、このゲームが残す余韻は長い。
スクリーンショット











