Metro Exodus

Metro Exodus

開発: 4A Games発売: Deep Silver¥538
アクション

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

核心を一言で言えば、「生き延びることの重さ」を全身で感じさせるゲームだ。銃を撃つ爽快感でも、広大なオープンワールドを駆け回る自由感でもない。弾薬が尽きそうな状況でミュータントの群れと向き合い、フィルターが劣化したガスマスクで呼吸を数えながら廃墟を這い進む——そういった緊張と克服の繰り返しが、このゲームの本質にある。『メトロ エクソダス』は、サバイバルという概念を肌感覚で理解させてくれる数少ないタイトルだ。 ゲームプレイの手触りは独特のもどかしさと充実感が同居している。武器は現場で拾った素材でカスタマイズと修理を繰り返す。銃身、照準器、グリップ、マガジン——パーツの組み合わせによって射撃感がガラリと変わるのは素直に面白い。ただし弾薬は常に不足気味で、戦闘ごとに「ここは戦うべきか、回避すべきか」を瞬時に判断する必要がある。ステルスを選ぶと道中が格段に楽になるが、人間の敵は視野と聴覚が鋭く、完全な透明人間プレイはできない。適度な緊張感が保たれているのはゲームデザインの巧みさだろう。 序盤の地下鉄から脱出した後、物語は広大なロシアの荒野へと舞台を移す。各章ごとに異なるロケーションが用意されており、砂漠地帯、深い森、嵐に閉ざされた湖岸など環境が多彩に変化する。一部の章はかなり広めのオープンワールド構造を採用しており、サイドクエストや探索要素も充実している。ただし全章が同じ構造というわけではなく、比較的一本道で緊迫感を優先した章も存在する。この緩急のバランスが、長時間プレイでも飽きさせない工夫になっている。 グラフィックスは現時点でも十分に見応えがある。特に光の表現が素晴らしく、廃墟から差し込む夕日、嵐の中で揺れるランタンの炎、地下通路の闇の中に浮かぶ手持ちライトの光束——どれも場の雰囲気を強烈に印象づける。RTX対応環境であればレイトレーシングによってさらに臨場感が増すが、標準設定でも十分に美しい。サウンドも非常に丁寧に作り込まれており、ロシア語音声のセリフ回しには独特のリアリティがある。日本語字幕を読みながらキャラクターたちの関係性を追うのは、映画を観るような没入感をもたらす。 世界観は核戦争後のロシアを舞台にしたアンドレイ・グルホフスキーの小説シリーズを原作としている。本作の主人公アルチョムは仲間たちと列車「オーロラ号」で大陸を横断しながら、放射能に汚染されていない人類の生存地を探す旅に出る。旅の途中で出会う人々の生きざまや、各地に残された文明の痕跡が、この世界の悲劇と希望を語る。説明的な台詞やムービーではなく、探索の中で発見する日記や手紙、壁の落書きといった環境ストーリーテリングが丁寧に機能しており、世界の解像度を自然に高めていく。ネタバレを避けるとすれば、「家族と仲間への愛」が全編を通じた通奏低音になっていると言えば伝わるだろうか。 同じポストアポカリプスのFPS・TPS系で比較するなら、『Fallout 4』よりも世界観への没入とシリアスなトーンを重視しており、RPG的な自由度よりもナラティブの力に寄りかかったゲームだ。『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズとは雰囲気が非常に近いが、こちらはより演出とストーリー進行がしっかり管理されている。完全なサンドボックス自由度よりも「体験として整えられた荒野」を提供する、という設計思想の違いがある。また『The Last of Us』と比べると操作性と戦闘の洗練度は一歩劣るが、その荒削りさこそが世界観と合致しているとも言える。 クリアまでのプレイ時間は難易度や探索度によって幅があるが、メインストーリーのみで15〜20時間、サイドコンテンツをしっかり回ると25〜30時間程度が目安になる。エンディングは行動によって分岐があり、特定の選択がエンドに影響するため、2周目も新たな発見がある。ただしハードコアな周回ゲームではなく、1周を丁寧に遊ぶことに主眼が置かれた設計だ。 正直な注意点も挙げておこう。武器の操作性や照準の感覚は、現代の洗練されたシューターと比べると独特のクセがある。慣れれば問題ないが、最初のうちは「思ったように当たらない」という感覚を覚えるかもしれない。また難易度「ノーマル」でも弾薬と資源の管理は常に意識が必要で、丁寧に探索しないとじわじわ苦しくなる。アクション純度の高いシューターを期待すると物足りなさを感じる可能性がある。 こういう人には強く勧めたい。暗い世界観の中にある人間ドラマに心を動かされるタイプのプレイヤー、探索と発見の緊張感を楽しめる人、ゲームに「体験」としての没入を求める人。¥538という価格帯は、このクオリティの体験に対して明らかに割安であり、コストパフォーマンスは最高水準だ。逆に、テンポの速いアクションやシームレスな快適操作を優先する人、明るくポジティブなトーンのゲームが好みの人には合わないかもしれない。放射能と絶望の漂う灰色の世界は、美しくも重い。それを「味」と受け取れるかどうかが、このゲームを愛せるかの分岐点になる。
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スクリーンショット

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