
The Last of Us™ Part I
開発: Naughty Dog LLC発売: PlayStation Publishing LLC¥3,795
アクションアドベンチャー
PlayNext レビュー
ゾンビゲームだと思って手を出すと、その認識は最初の数分で崩れ去る。『The Last of Us Part I』が問いかけるのは「どうやって生き残るか」ではなく、「何のために生き残るのか」だ。荒廃した世界を舞台にしながら、このゲームの本質は人間同士の関係性にある。プレイし終えたとき、ゲームをクリアした達成感よりも、長編映画を観終えたような静かな余韻が残る。それがこの作品の核心だ。
ゲームプレイは「ステルスと近接戦闘を組み合わせたサバイバルアクション」に分類されるが、実際の手触りはもっと緊張感がある。主人公のジョエルは無双系の英雄ではなく、あくまで「強い人間」だ。真正面から複数の敵に突っ込めば簡単に死ぬ。リソースは常に乏しく、クラフトで作れるアイテムも限られている。草むらに潜んで敵のパターンを読み、物音を立てないよう慎重に通路を抜けていく——その緊張が解けた瞬間の安堵感は独特だ。戦闘に入ってしまえばレンガや瓶で敵の注意を引き、背後から仕留めるか、あるいは銃で強引に突破するかを瞬時に判断する必要がある。弾薬は贅沢品であり、使うたびに「本当にここで使うべきか」と考えさせられる設計になっている。
感染者との戦いには別の怖さがある。視覚が退化したクリッカーはこちらの足音に反応するため、画面を見ながらコントローラーの操作音すら気になってくる。このゲームを深夜にヘッドフォンでプレイすることは推奨しないかもしれない——意味がわかると怖い。アップグレード要素はガレージで道具を改良したり、ピルで身体能力を強化したりと地味だが、それがリアリティを支えている。爆発的な成長ではなく、じわじわと生存に慣れていく感覚だ。
ビジュアルはPS3オリジナル版(2013年)からの完全リビルドで、現世代のクオリティに仕上がっている。廃墟に侵食する自然——植物が絡みつくビルの廃墟、水浸しになった地下街——の描写は圧巻だ。崩壊から20年という時間経過がテクスチャひとつひとつに宿っており、「かつてここに人が生きていた」という空気を醸し出す。サウンドも特筆すべきで、ギタリストのガスタボ・サンタオラジャが手がけた楽曲はシンプルなアコースティックギターを基調とし、派手さを排した分、感情の振れ幅が大きい。静寂の使い方がうまく、音が鳴っていない場面ほど緊張することがある。
ストーリーの概要は既にご存知の方も多いだろうが、ネタバレなしで言えば「二人が旅をする話」ではない。これは「喪失を抱えた人間が、もう一度誰かを守ろうとする話」だ。ジョエルとエリーの関係は序盤から終盤まで一直線には変化せず、ぎこちなさや摩擦を経てゆっくりと変容していく。その過程が丁寧で、プレイヤーはいつの間にか二人の旅に感情移入している。セリフのひとつひとつが作り込まれており、移動中の何気ない会話が世界観を補完する。
似た作品として比較されるのは『バイオハザード』シリーズや『デイズゴーン』あたりだが、性質が大きく異なる。バイオはパズル要素とホラー演出が軸であり、デイズゴーンはオープンワールドのサバイバルに比重がある。TLoUは一本道の構成を徹底することで、物語の密度と演出の精度を高めている。自由度は少ないが、「次のシーンが見たい」という牽引力はむしろ高い。『A Plague Tale』シリーズと並ぶ「シネマティック・サバイバルアクション」という括りが最も近い。
プレイ時間はメインストーリーのみで12〜16時間程度。収集要素(メモや工芸品)を丁寧に拾いながらだと20時間前後かかる。高難易度モード「サバイバル」や「グラウンド」では資源配置も変わり、緊張感が跳ね上がる。周回プレイのインセンティブはアップグレードの引き継ぎなどがあるが、このゲームはトロフィー収集よりも「物語をもう一度体験したい」という動機で周回する人が多い。
注意点として、本作はグラフィックも含めた暴力表現が激しい。戦闘シーンの生々しさは意図的なもので、「生き残ることの代償」を視覚的に示す演出のひとつだが、受け付けない人もいる。また、ストーリーの展開によっては精神的にきつい場面もある。Steamのレビューで「感情が追いつかなかった」という声が多いのは、それが証拠だ。操作面では基本的にコントローラー推奨で、マウス・キーボードでもプレイできるが快適さに差が出る。
ホラーゲームは苦手だが重厚なストーリーが好きな人、映画的な体験をゲームで求める人、あるいは人間ドラマをじっくり味わいたい人には心からおすすめする。逆に、爽快なアクションや広大なオープンワールドを期待すると物足りなさを感じるかもしれない。このゲームは「楽しませる」より「考えさせる」方向に振れており、それを面白さと感じるかどうかが分かれ目になる。プレイ後に誰かと話したくなるゲームは少ないが、TLoUはその数少ない作品のひとつだ。
スクリーンショット











