
ペルソナ4 ザ・ゴールデン
Persona 4 Golden
開発: ATLUS発売: SEGA¥990
RPG
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
霧に包まれた田舎町で、主人公は一年間の転校生活を送ることになる。到着早々、町では不可解な連続殺人事件が起き、雨の夜にテレビを眺めていると「テレビの中に入れる」という都市伝説が現実のものとなる——この導入だけで、『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』がどれほど独自の磁場を持ったゲームかが伝わるだろう。謎解き、青春、戦闘、そして「自分と向き合う」という重いテーマが、不思議なほど軽やかに絡み合っている。
ゲームプレイは大きく「日常パート」と「ダンジョン探索パート」の二層構造になっている。日常パートでは授業に出席し、バイトをこなし、仲間や町の人々と関係を深めていく。いわゆる「コミュニティ」システムと呼ばれる人間関係の積み重ねが、戦闘力に直結するペルソナの強化につながるため、「誰と過ごすか」という選択が常に戦略的な意味を持つ。限られた時間の中でどのコミュニティを優先するかの計算は、やり込み勢にとっては一種のパズルでもある。
ダンジョン探索はターン制のコマンドバトルで、弱点属性を突いてダウンさせ、「総攻撃」を叩き込む爽快感が中毒性の核にある。難易度は標準設定でも一定の歯ごたえがあり、油断すると全滅する場面は珍しくない。一方でテンポは非常に良く、戦闘アニメーションのキレと「All-Out Attack」の演出は何百回やっても飽きない。ボス戦はパターン把握と属性対策が求められるが、理不尽な難しさではなく、準備と読みが報われる設計だ。
ビジュアルとサウンドは、このゲームの「顔」と言っていい。UIは黄色を基調とした独特のポップデザインで、メニューを開くだけで気分が上がる。キャラクタービジュアルはアニメ調だが、場面ごとの「静止画×テキスト」演出が映画的なテンションを生み出している。そして音楽——菊田裕樹と目黒将司が手がけたサウンドトラックは、ゲーム音楽の枠を超えた完成度だ。戦闘曲「普通じゃない」のギターリフが頭に焼きつき、日常を歩く「Reach Out To The Truth」のノリが耳から離れなくなる頃には、あなたはすでにこの世界の住人になっている。
物語の軸は「連続殺人事件の犯人を突き止める」という推理ミステリーだが、それ以上に強く描かれるのは「仲間たちの内面の葛藤」だ。テレビの中に引きずり込まれた人間は、自分が認めたくない「もう一人の自分」と対峙させられる。このメタファーが実にうまく機能していて、各キャラクターのダンジョンは彼らの心の闇そのものになっている。ネタバレを避けて言えば、このゲームをプレイした後では「本当の自分とは何か」という問いがずっと頭に残り続ける。
同じアトラスのJRPGとして『ペルソナ5 ロイヤル』と比較されることが多い。P5Rの方がUIの洗練度や演出の派手さでは上だが、「田舎の人間関係のしんどさと温かさ」「推理もの特有の張り詰めた緊張感」という点でP4Gは唯一無二だ。ペルソナ3シリーズと比べると、P4Gは全体的に明るく前向きなトーンで、初めてシリーズに触れる人にとっても入りやすい。『ドラゴンクエストXI』や『ファイナルファンタジーXVI』といった他メーカーのJRPGと比べると、「ゲームとしての爽快感」よりも「人間ドラマと選択の積み重ね」に比重があることが特徴だ。
プレイ時間は1周目で60〜80時間が目安。全コミュニティMAX+トロフィーコンプリートを目指すなら2周以上必要で、100時間超えも珍しくない。2周目以降はコミュニティの引き継ぎができるため、1周目よりも余裕を持った立ち回りが可能になる。エンドコンテンツとして強力なボスも用意されており、やり込み派には十分な歯ごたえがある。
注意点も正直に書いておきたい。まず序盤(特に最初の数時間)のテキスト量が多く、実際にコントロールを握れるようになるまで時間がかかる。テンポを重視する人には最初の関門になり得る。また、コミュニティ管理は意外と厳しく、攻略情報なしで全MAXを狙うのはほぼ不可能に近い。さらに本作はPC版への移植作であり、元のPSVita版からの調整が入っているものの、一部の操作感やロード周りで気になる点が残ることもある。¥990という価格が示す通り、グラフィックスの時代的な古さは覚悟しておく必要がある。
「青春もので泣ける話が好き」「謎解きやミステリー要素のあるRPGをやりたい」「音楽と世界観にどっぷり浸かりたい」「テキスト量が多くても気にしない」——そういう人には、迷わず最高評価でおすすめできる。反対に、「アクション要素が強いゲームが好き」「ストーリースキップして戦闘だけしたい」「オープンワールドの自由度を求めている」という人には少し合わないかもしれない。
¥990という価格で、これだけの密度と深みを体験できるJRPGは他にない。プレイし終えた後、八十稲羽という町と、そこで出会った仲間たちのことを、きっと長い間忘れられないはずだ。
スクリーンショット











