
BIOHAZARD VILLAGE
Resident Evil Village
開発: CAPCOM Co., Ltd.発売: CAPCOM Co., Ltd.¥3,990
アクション
Steam レビュー
非常に好評
PlayNext レビュー
薄暗い霧に包まれた東欧の村に足を踏み入れた瞬間、プレイヤーは「これはホラーゲームではなく、ホラーの皮を被ったアクションだ」と気づく。だがそれが本作の最大の魅力でもある。恐怖に縛られて立ち尽くすのではなく、恐怖を突き破って前へ進む感覚——バイオハザード ヴィレッジはそういうゲームだ。前作7がじっとりとした密室恐怖で息を詰まらせたとすれば、本作はその息苦しさを屋外の広大な雪景色に解き放ち、大きく方向転換してきた。
主人公イーサン・ウィンターズは、3年前の悪夢をようやく乗り越えようとしていた。妻のミアと生まれた娘のローズと共に、ひっそりと暮らしていた平穏な日常が、ある夜突然崩れる。目が覚めると、見知らぬ村。娘はさらわれ、イーサンは孤独に雪の中へと投げ出される。「娘を取り戻す」という単純にして切実な目的が、プレイヤーをどこまでも突き動かす原動力になる。家族を守るための父親の物語は、シリーズの中でも異色だが、それゆえに感情移入しやすく、ストーリーへの引きが強い。
ゲームプレイの核心は「リソース管理と探索のサイクル」にある。村全体がひとつの大きなマップとして繋がっており、各エリアをクリアするたびに新しい鍵や道具が手に入り、以前は入れなかった場所への扉が開く。メトロイドヴァニア的な構造が採用されており、「あそこに気になる宝箱があったな」という記憶を持ちながら探索する楽しさがある。アイテムを売買できる謎の商人「デューク」の存在も大きく、武器のアップグレードやアイテム購入のためにお金を稼ぐという目的が行動に強い動機付けを与えてくれる。
戦闘の手触りは非常にリッチだ。銃ごとの反動、リロードのタイミング、弾薬の重さ——どれもずっしりとした存在感があり、「撃っている」感覚が気持ちいい。敵を倒すと素材が手に入り、それをデュークに調理させると料理が完成してイーサンの能力が永続強化される。この「料理による育成」システムが巧妙で、マップの隅々を探索してニワトリやブタを追いかけ回すという、ホラーゲームとは思えない牧歌的な行動をとる自分に気づいて思わず笑ってしまう。
ビジュアルはRE ENGINEの成熟を感じさせる完成度だ。雪が積もった村の路地、古城の燭台が照らす石畳の廊下、水面に映る歪んだ影——どのロケーションも作り込まれており、止まって眺めたくなる美しさがある。特に序盤のドミトレスク城は、息をのむほどのゴシックな荘厳さで、建物の中を歩いているだけで独特の高揚感がある。音響設計も秀逸で、遠くから聞こえる足音、軋む床板、風が唸る音が、常に「何かいるかもしれない」という緊張感を維持してくれる。
本作を語るうえで避けて通れないのが、前作との比較だ。バイオ7が「バイオ4以降の正統進化としてのファーストパーソン恐怖体験」を追求したとすれば、ヴィレッジは明らかにバイオ4のスピリットを継承している。テンポよく進むアクション、ショップで武器を強化する爽快感、多様なロケーションと個性豊かなボスたち——バイオ4を愛したプレイヤーが「これが自分の求めていたものだ」と感じるはずの要素が詰まっている。一方で、Dead Space シリーズのような「絶望的な孤独感の中で戦うサバイバルホラー」と比べると、ヴィレッジはずっと明るく爽快な体験に傾いている。純粋な恐怖を求めるなら物足りないかもしれないが、「怖いけど楽しい」というバランスを求めるなら本作は理想的な着地点にある。
クリアまでのプレイ時間はおよそ10〜12時間で、ホラーアクションとしては適度なボリュームだ。ただし本作の真のやり込みはクリア後に本領を発揮する。プレイヤーの動きが激しくなる「マーセナリーズ」モード、難易度「ヴィレッジ・オブ・シャドウズ」での歯ごたえのある再挑戦、各種実績コンプリートなど、周回プレイを誘う要素が豊富だ。2周目には「宝の地図」を頭に入れて最適なルートを走るスピードランが面白く、慣れてくると8時間以内でのクリアを目指したくなる。
注意点としては、序盤の「村」フェーズが最も探索的で自由度が高い一方、中盤以降は一本道になりがちという構造的な問題がある。また、ゲーム全体を通してそこまで怖くないため、バイオ7のような「恐怖でコントローラーを置きたくなる体験」を期待すると拍子抜けする可能性がある。難易度については、スタンダードであれば詰まる箇所はほぼなく、アクションゲームとしての難易度は低め寄りだ。
アクションとホラーの両方を楽しみたい人、バイオ4のファン、娘を救う父親の感情的なストーリーを体験したい人には強くおすすめできる。特にシリーズ未経験でも本作は7の内容を軽く把握していれば十分に楽しめる作りになっており、入門としても優秀だ。一方で、じっくりとした密室恐怖や圧倒的な恐怖感を求めるプレイヤー、あるいはオープンワールド的な広大な自由度を期待するプレイヤーには物足りなさを感じるかもしれない。
価格3,990円という点も含めて、このクオリティのアクションホラーを10時間以上楽しめるのは純粋にコストパフォーマンスが高い。霧の中の村で、父親として娘を取り戻す旅は、バイオハザードシリーズの新たな高水準として記憶に残る体験だ。
スクリーンショット











