Celeste

Celeste

開発: Maddy Makes Games Inc.発売: Maddy Makes Games Inc.¥575
アクションアドベンチャーインディー

Steam レビュー

非常に好評

PlayNext レビュー

「死んでも死んでもやめられない」という感覚を、これほど鮮やかに体験させてくれるゲームは珍しい。Celesteは、山を登るというシンプルな目標のもとに、プラットフォーマーとしての純粋な快楽と、一人の人間が自分自身と向き合う物語を、見事に一本の糸で結び合わせた作品だ。最初のステージで死ぬたびに「もう一回」と手が動いてしまう瞬間、このゲームの本質を体に刻み込まれる。 操作できるアクションは驚くほどシンプルだ。ジャンプ、空中ダッシュ、壁にしがみついてよじ登る。これだけしかない。しかし開発者のマディ・ソーンバーグは、この3つの動作だけで、数百ものユニークな難関を生み出した。ダッシュの方向は8方向に設定でき、空中で一度使うと着地かダッシュの回収ポイントに触れるまでリチャージされない。この制約が、すべての判断に重みを与える。「今ダッシュを使うべきか、温存すべきか」という選択が、一秒にも満たない瞬間に連続して迫ってくる。 手触りはとにかく気持ちいい。キャラクターのマデリンは入力に対して即座に反応し、慣性の余韻も計算されている。壁へのしがみつきは指一本で制御でき、タイミングをミスしたとしても「操作が悪い」ではなく「判断が悪かった」と素直に思える。これはゲームデザインとして非常に誠実な作りで、理不尽さをほぼ感じさせない。ミスをするたびに直前の地点からほぼ瞬時に再スタートできるため、テンポが崩れない。多いプレイヤーで一つのステージに数百回死ぬが、それがストレスではなく学習の積み重ねになっている。 ステージ構成は7つの「面」と終章に分かれており、各面が明確にテーマを持っている。重力に逆らった鏡の間、泡立つ温泉、吹雪で視界の奪われる山頂付近——それぞれが異なる操作感覚と思考を要求する。同じダッシュというアクションが、場面ごとにまるで別の意味を持って機能するのが巧みだ。また各ステージには隠し部屋「Bサイド」テープが存在し、本編クリア後の高難易度ルートが解放される。さらに全ての収集物を集めた先には「Cサイド」という、エキスパート向けの圧縮された地獄が待っている。やり込みの山は、本編の何倍も高い。 ビジュアルはピクセルアートでありながら、驚くほど表情豊かだ。16×16ピクセルのマデリンが、岩に激突した瞬間に目をギュッとつぶる。うずくまって泣く。笑う。小さいキャラクターが感情を持って動いている感触が、物語への没入を深める。背景の描き込みも緻密で、それでいてプレイ中に視界を圧迫しない絶妙なバランスがある。サウンドトラックはLena Raeが手がけており、ステージのテーマに合わせて変化する。序盤の軽やかなピアノから、後半の緊張感あるシンセへと移行する流れは、山を登るという体験と完全に同期している。特にチャプター6のBGMは、プレイ中に思わず手が止まるほど美しい。 物語はネタバレなしで語れる範囲を慎重に守るが、これだけは言える——Celesteはゲームを通じて「不安障害」や「自己否定」というテーマを真正面から扱っている。マデリンがセレステ山に登ろうとする動機は最初曖昧だが、物語が進むにつれて、山そのものよりも自分の内側にある何かと戦っていることがわかってくる。このテーマをゲームプレイのメカニクスと結びつける方法は、現代のインディーゲームの中でも特に評価されている。インタビューでマディ自身がトランスジェンダーであることや、制作中に精神的な困難を抱えていたことを公表しており、物語にはその経験が根底にある。 比較対象としてよく挙がるのはHollowKnightだが、両者はかなり異なる体験を提供する。HollowKnightはメトロイドヴァニア型の探索と死に覚えが中心で、世界を理解するのに時間がかかる。Celesteは一本道の進行で、各ステージのゴールが明確だ。難易度の方向性も違う——HollowKnightはボス戦のパターン把握に比重が置かれ、Celesteはコース攻略のリズム把握に比重が置かれる。また、Super Meat Boyと似た「即死・即リトライ型」の構造を持つが、Celesteはストーリーに厚みがあり、感情的な文脈が行動に意味を与えている点が大きく異なる。 プレイ時間は本編クリアで8〜15時間が目安で、全収集物とBサイド・Cサイドを含めると30〜50時間以上になる。腕前によって大きく変動するが、いずれにせよコストパフォーマンスは圧倒的だ。575円という価格でこの密度は、同ジャンルの相場と比べてもかなり良心的である。 注意点も正直に書いておく。高難易度のBサイド・Cサイドは、かなり反射神経と正確な操作を要求される。「本編は楽しめたがBサイドで完全に詰まった」という声は多い。ただし開発者は「Assist Mode」を用意しており、ダッシュ回数の増加やスローモーションなど、難易度を自分で調整できる仕組みがある。これを使うことへの遠慮は不要で、公式が「ゲームを楽しむための機能」として積極的に推奨している。 こういう人に強くおすすめしたい——プラットフォーマーが好きで歯ごたえを求めている人、繰り返し挑戦することへのストレス耐性がある人、ゲームを通じて感情的に揺さぶられることに抵抗がない人。逆に、オープンワールドの自由な探索や広大なマップを好む人、即死型のゲームプレイが体質的に合わない人には向かない可能性がある。 Celesteが特別なのは、「難しいゲームをクリアした達成感」と「一人の人間の物語を見届けた満足感」を同時に手渡してくれるからだ。山頂に到達したとき、それはマデリンだけの勝利ではなく、何度も死に続けたプレイヤー自身の勝利でもある。その設計の誠実さが、数年経った今でも新規プレイヤーに語り継がれる理由だと思う。
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スクリーンショット

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