
Crusader Kings III
開発: Paradox Development Studio発売: Paradox Interactive¥2,097
RPGシミュレーションストラテジー
Steam レビュー
圧倒的に好評
PlayNext レビュー
歴史ゲームでよくある「軍隊を動かして領土を広げる」だけの体験を期待すると、クルセイダーキングスIIIは最初から裏切ってくる。このゲームの核心は「人間を動かす」ことだ。王として、公爵として、あるいは辺境の小領主として、自分のキャラクターが何を望み、誰を愛し、誰を憎み、どんな欠点を抱えて生きるか——そこに徹底的にフォーカスする。中世ヨーロッパを舞台にした壮大な王朝経営ゲームでありながら、その本質は「人物の一生を生きるロールプレイング」にある。
ゲームを起動するとまず、867年か1066年のどちらかを選んでプレイを開始する。マップはブリテン諸島からインド亜大陸まで広がり、プレイヤーは歴史上の実在人物か、あるいは架空の支配者を選んでその一族の物語を紡ぐ。操作の基本はシンプルで、左クリックで情報確認、右クリックでアクション選択という直感的な構成だ。しかしその「情報」の深さが他のゲームと一線を画す。家臣一人ひとりに性格特性があり、「野心家」の家臣は昇進がなければ謀反を起こすかもしれない。「貪欲」な配偶者は国庫を浪費するかもしれない。「無慈悲」な特性を持つ自分の息子は、王座を狙って毒を盛るかもしれない——実際に起きた話だ。
テンポについて正直に言えば、これは「待つゲーム」でもある。日時はリアルタイムで進行し、プレイヤーは速度を1倍から5倍まで調整できる。宮廷陰謀を仕掛けて結果を待ち、戦争を起こして講和交渉し、子供を育てて後継者を育成する。この「計画して待つ」サイクルが心地よいリズムを生む。しかし同時に、画面右端から次々と飛んでくるイベント通知の嵐には圧倒される。家臣が揉めている、隣国が宣戦布告した、愛人が妊娠した——あちらを処理すればこちらが炎上する、まさに王族の日常だ。
ビジュアルはいわゆる「爽快なグラフィック」ではない。戦場の迫力ある3Dバトルシーンはなく、代わりに精密なマップとキャラクターポートレート、そして質の高いイベントイラストで世界を表現する。しかしこの選択は正しい。地図上で広がる自分の支配領域を眺めながら、50年かけて拡大した版図の色合いを目にする瞬間の達成感は独特だ。BGMは格調高い中世風弦楽で統一されており、長時間プレイしていても疲れない落ち着いた音響設計になっている。
世界観の面白さは「歴史のif」を体験できる点だ。1066年のノルマン征服以前のイングランドで、ハロルド王として勝利を守り続ける。バイキングの末裔として地中海を征服する。このゲームには「決められたストーリー」が存在しない。自分のキャラクターが持つ信仰、文化、性格特性、秘密——それらが絡み合って生まれる一族の歴史が、世界でただひとつのナラティブになる。「妻に毒を盛られて死んだ王の息子が、母を幽閉し復讐を遂げた後に十字軍で戦死し、孫娘が女王として即位した」という展開は、他の誰も経験しない自分だけの物語だ。
Civilization VIと比べるなら、CKIIIは「文明の発展」より「人間ドラマ」を重視する。都市建設や科学技術の研究ツリーに当たるものはあるが、あくまで主役はキャラクターだ。Total War シリーズのようなリアルタイム戦闘はなく、戦争はダイスと数字で解決される。「戦略ゲームの戦闘が苦手だが歴史は好き」というプレイヤーにはむしろ向いている。Europa Universalis IVとはパラドックスシリーズの兄弟作だが、EUはより国家経営・外交システム寄りで、CKIIIは個人・家族のドラマに特化している。
プレイ時間の目安として、一度のプレイセッションで軽く500年分の歴史を動かすこともできるが、まず最初の100年が最も濃密だ。一族の基盤を固め、相続法を整え、有能な後継者を育てる過程は「あと少し、もう少し」と気づけば深夜になる典型的な罠だ。実績解除、異なる文化圏・信仰でのプレイ、高難易度チャレンジ(孤立した小国から世界征服など)と周回要素は膨大で、Steam上での平均プレイ時間が数百時間を超えるプレイヤーも珍しくない。
注意点として、学習コストは無視できない。チュートリアルは丁寧だが、相続法・封建制度・宗教システム・宮廷陰謀の仕組みを理解するまで、最初の数時間は情報の洪水に溺れる。また、DLCが多数発売されており、バニラ状態から追加するほど体験が豊かになるが、DLC全部揃えると数万円規模になる点は覚悟が必要だ。本レビュー執筆時点での価格は¥2,097だが、DLCへの誘惑は強い。
「権謀術数・人間ドラマ・長期戦略」の三つが刺さる人には間違いなく強くおすすめする。歴史好き、ロールプレイング好き、「自分だけの物語を作りたい」プレイヤーは特にハマるはずだ。逆に、即時のアクションフィードバックや明確な勝利条件を求めるプレイヤー、または「ゲームを始めたら今日中に終わらせたい」タイプには全く向かない。このゲームに終わりはなく、始めたその瞬間から次世代の物語が始まっている。¥2,097で何百時間も遊べるコストパフォーマンスを考えれば、中世王朝の物語に少しでも心が動くなら、試してみる価値は十分にある。
スクリーンショット











