Lies of P

Lies of P

開発: NEOWIZ発売: NEOWIZ¥4,180
アクションアドベンチャーRPG

PlayNext レビュー

ピノキオが嘘をつく。その一言が、このゲームの本質をすべて語っている。童話の主人公として知られる木の人形が、廃墟と化したクラット市を舞台に血と鉄の中を生き抜く——『Lies of P』は、誰もが知る物語を完全に別の顔へと反転させた、2023年を代表するソウルライクの傑作だ。 このゲームの核心は「嘘をつく選択」にある。ピノキオは本来、嘘をつくと鼻が伸びる存在だ。しかしこの作品では、プレイヤーが意図的に嘘をつく場面が何度も訪れる。その選択が物語の分岐を生み、エンディングに影響を与える。アクションゲームに道徳的選択のレイヤーが乗るという構造は、単なる「難しいアクション」に終わらない深みをゲーム全体に与えている。初めてこの仕掛けに気づいたとき、ただのソウルライクではないと確信した。 戦闘の手触りは、フロム・ソフトウェア作品と比べてより「攻撃的」に設計されている。本作最大の特徴はパリィ(完璧なガード)システムで、敵の攻撃に合わせてガードボタンを押すことでダメージを跳ね返し、攻撃チャンスを作れる。ダークソウルシリーズの回避重視の立ち回りとは異なり、Lies of P では積極的に敵の攻撃を受け止めることが攻略の核になる。このシステムに慣れるまでは死の連続だが、一度体に染み込んだときの爽快感は格別だ。ボスの攻撃タイミングを読んで、ギリギリでパリィを決めた瞬間の達成感は他のアクションゲームでは味わいにくいレベルにある。 武器システムも独特で、ブレード(刃部分)とハンドル(柄部分)を自由に組み合わせられる。例えば高リーチのブレードに素早い攻撃モーションのハンドルを組み合わせたり、炎属性のブレードで弱点を突いたりと、自分好みのビルドを作る楽しみが広い。さらに左腕は義手になっており、グラップリングフックやロケットパンチ、電気増幅など特殊能力を付け替えることができる。このカスタマイズの幅がやり込みの大きな軸になっており、2周目以降に別の組み合わせで試したくなる設計になっている。 ビジュアルは「ベル・エポック時代のダークファンタジー」という設定通り、19世紀末ヨーロッパの退廃的な美しさを精緻に再現している。石畳の街路、ガス灯の光、錆びた機械人形——クラット市は荒廃していながらも、どこか哀愁を帯びた美しさがある。BGMはクラシック音楽をベースにしながらも現代的なアレンジが施されており、緊張感を高めるボス戦の音楽と、静かな探索シーンのBGMのギャップが感情をうまく揺さぶる。各地に点在するレコードを集めることで、宿に戻ったときに音楽を流せる細かい演出も好きだった。 世界観の核にあるのは「人形と人間の境界線」という哲学的なテーマだ。クラット市ではかつて人々の生活を支えていた人形たちが暴走し、街を滅ぼした。その中でピノキオは、自分が何者であるかを問いながら進む。NPCとの交流も一筋縄ではいかず、誰が信頼できる存在なのかが常に問われる。直接的なネタバレは避けるが、ゲーム後半で明かされる真実は、冒頭の「嘘をつく」という選択の意味を根底から変える。クリア後にもう一度序盤のセリフを思い返すと、別の意味が浮かんでくる構造には唸らされた。 比較対象として真っ先に名前が挙がるのはBloodborneだろう。ゴシックホラーの雰囲気と攻撃的な戦闘スタイルという点では確かに近い。ただし、Lies of P はパリィ精度と武器カスタマイズに独自の深さがあり、単なるBloodborneの模倣には収まっていない。Sekiro: Shadows Die Twiceのような「弾き」の気持ちよさも感じるが、キャラクター成長の幅はSekiroより広く、より多様なビルドが試せる。韓国産のソウルライクとして「どうせ劣化コピーでしょ」と思って手を出したら、完全に認識を改めることになった一本だ。 プレイ時間の目安は初回クリアで30〜40時間ほど。隠し要素やサブクエストを丁寧に拾えば50時間を超えることもある。エンディングは複数あり、選択によって大きく異なるため、少なくとも2周は遊べる設計だ。2周目はニューゲームプラスとして引き継ぎ可能で、強くなった状態で新たな武器ビルドを試す楽しさがある。全実績コンプリートを目指すなら3周必要になるが、戦闘が磨かれていくにつれて周回プレイ自体が苦でなくなっていく。 注意点として正直に書くと、このゲームは最初の数時間が最も辛い。パリィのタイミングが体に入るまでの時間は人によってかなり差があり、序盤のボスで詰まって離脱するプレイヤーも少なくない。また、一部のボスはフェーズ移行後に攻撃パターンが急変するため、初見の不条理感を強く感じる場面もある。ストーリーも複雑な伏線が多く、すべてを理解するには注意深い読み込みが必要だ。 こういう人には強くおすすめしたい——ダークソウルシリーズやBloodborneをクリアして「次の挑戦が欲しい」と思っている人、ソウルライクのシステムは好きだがフロム作品はやり尽くした人、ダークな世界観とストーリーが刺さる人、武器カスタマイズでビルドを考えるのが好きな人。反対に、難しいアクションが苦手な人や、死にゲー特有のストレスに耐性がない人には正直ハードルが高い。ただし、難易度は3段階から選べるため、ストーリーを楽しみたい人向けの調整もある程度可能だ。 「嘘をつくことで、何かを守れるか」——この問いに向き合いながら鉄と血の夜を生き延びたとき、あなたはこのゲームが単なるソウルライクではなかったと気づくはずだ。
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スクリーンショット

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