龍が如く7外伝 名を消した男

龍が如く7外伝 名を消した男

Like a Dragon Gaiden: The Man Who Erased His Name

開発: Ryu Ga Gotoku Studio発売: SEGA¥1,782
アクションアドベンチャー

PlayNext レビュー

龍が如くシリーズを追いかけてきたファンにとって、桐生一馬という男はある種の「伝説」だ。7本の本編を通じて鍛え上げられてきた堂島の龍が、6の結末でひとつの幕を下ろしたはずだった。しかし『龍が如く7外伝 名を消した男』は、その「その後」に潜む暗部を掘り起こす。名を捨て、死んだことにされ、影の組織のために働く桐生一馬——その姿は、かつての英雄像とは一線を画している。本作の核心は「英雄の引退後」という、シリーズが誰も踏み込んでこなかった領域にある。 戦闘システムは従来のスタイル切替方式から大きく刷新され、「エージェントスタイル」と「ヤクザスタイル」の2スタイル制に絞られている。エージェントスタイルは、ワイヤーアクションを駆使した立体的な戦闘が特徴で、敵を引き寄せたり自分が飛びかかったり、空中コンボを叩き込んだりと、これまでの龍が如くでは見られなかった機動性を体験できる。一方のヤクザスタイルは、桐生の原点とも言える重厚なパンチとタックルで押し切るスタイルだ。この2スタイルをシームレスに切り替えながら戦う感覚は、シリーズ経験者ならなおさら「桐生が帰ってきた」という興奮を呼び覚ます。 操作のテンポは軽快で、極技(ヒートアクション相当)の発動が比較的容易なため、爽快感は高い。ただし、ゲーム全体のボリューム自体はコンパクトに設計されており、本編ストーリーのクリアだけであれば10〜15時間程度で到達できる。これは本シリーズの他タイトルと比べて明らかに短く、「外伝」という冠が示すとおり、あくまでも8本編への橋渡しとしての立ち位置だ。ただ、本編をクリアしただけではこの作品の真の姿は見えてこない。 舞台となる「蒼天堀」と新ステージ「ソーシャスアイランド」は、それぞれ異なる顔を持つ。蒼天堀は『龍が如く5』以来の再登場となる繁華街で、細路地や夜の灯りに懐かしさを感じるファンも多いだろう。一方のソーシャスアイランドは、カジノ・ゲームセンター・カラオケ・闘技場などを詰め込んだ巨大な娯楽施設で、ここがやり込みの中心地となっている。バカラ、ポーカー、スロット、ブラックジャックといったカジノゲームに加え、UFOキャッチャー、ダーツ、ビリヤードなど、龍が如くお馴染みのミニゲーム群が揃う。特に「認証バトル」と呼ばれる闘技場コンテンツは、育成と戦略の要素が絡み合い、本編よりも長い時間を費やすプレイヤーが続出するほど中毒性が高い。 ビジュアル面では、『龍が如く8』と同世代のエンジンを用いており、キャラクターの表情や夜の街の光の表現は見ごたえがある。特に桐生の顔に刻まれた疲労と覚悟が、カットシーンごとに伝わってくる演出は秀逸だ。サウンドはシリーズお馴染みの熱い楽曲が多いが、本作は全体的に抑制されたトーンで、桐生の境遇に呼応するような静かな緊張感をBGMが支えている場面も印象的だ。 ストーリーについてはネタバレを避けるが、ひとつだけ言えることがある。これは単なるファンサービスの外伝ではない。「名前を消された男が、それでも自分であり続けようとする物語」として、シリーズの根幹にあるテーマ——アイデンティティ、絆、義——を正面から問い直している。桐生一馬というキャラクターに感情移入してきたプレイヤーほど、この物語は深く刺さるだろう。 同ジャンルとの比較で言えば、三人称アクションという点では『Ghostwire: Tokyo』や『Stellar Blade』と棚に並ぶかもしれないが、龍が如くシリーズのアクションが持つ独特の「ケンカ感」は他では代替できない。スタイリッシュなコンボを重視する『Devil May Cry 5』とも、オープンワールドの探索を軸とする『ゴーストオブツシマ』とも違う。街を歩き、飯を食い、ミニゲームで散財し、そして喧嘩する——この総体としての「生活感」が龍が如くの武器であり、本作もその文脈を忠実に継承している。 注意点として正直に述べると、本作はシリーズ未経験者にはあまり勧められない。1〜6の桐生の歴史を知らずに本作をプレイしても、ストーリーの感情的な重みの半分も受け取れないからだ。また、価格の安さ(¥1,782)に見合った内容か、という点では、ボリューム目当てのプレイヤーには物足りなく映るかもしれない。純粋なゲームプレイ時間より、ブランドへの愛着とストーリーへの投資で価値が変わってくるタイトルだ。 こういう人に強くおすすめしたい——龍が如く6をクリアして桐生一馬の結末に複雑な感情を抱いた人、8(無限の富)をプレイ前に桐生の現在地を確認したい人、40〜50時間のボリュームより内容の密度を優先できる人。逆に、シリーズの予備知識なしにアクションゲームとして手に取ろうとしている人、大ボリュームのオープンワールドを求めている人には、まず本編シリーズの1か0から始めることを強くすすめる。 ¥1,782という価格は、シリーズファンには間違いなく「安すぎる」。桐生一馬の物語に一区切りをつけるための作品として、この外伝は静かに、しかし確実に、プレイヤーの心に残るものを持っている。
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スクリーンショット

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